お風呂の蛇口の寿命は10年~15年、カートリッジ内蔵のモデルの場合はもう少し短くて8年~10年といわれることがあります。家族構成や、日頃の使い方によって水漏れなどのトラブルがいつ出始めるかは変わります。蛇口の交換を検討するきっかけになる理由のうち、体感的に一番多いのが「カランとシャワーの切り替えレバーからの水漏れ」です。次に多いのが「蛇口の根元からの水漏れ」で、次が「サーモスタットの温度調整レバーの故障」というところでしょうか。
使用頻度が高い蛇口であり、またパッキン類はゴムでできているため時間の経過とともに劣化することは避けられません。ここでは10年超使用してきたお風呂の蛇口(壁付きシングルレバー混合栓)を、新しい蛇口(壁付きツーバルブ混合栓)に交換した際の手順を解説します。
お風呂の蛇口の交換時期
キッチンや洗面台と同様に毎日使うのがお風呂の蛇口。そう簡単に壊れるものではありませんが、施工後10年~15年経過したあたりから不具合が出始めることが多いです。ハンドル部分からの水漏れや、蛇口本体の付け根部分と壁との隙間からの水漏れなどが典型例でしょう。
パーツの交換で対処できることもありますが、本体が古ければ古いほど、一度不具合が出ると小手先の修理ではすぐに不具合が再発するという可能性もあります。またシングルレバー混合栓では「カートリッジ」と呼ばれるパーツが内蔵されており、カートリッジの交換費用をかけるよりも本体ごと交換した方が合理的というケースもあります。
蛇口の使用実態によって蛇口の疲労具合が異なるために一概に「お風呂の蛇口の交換は施工後何年」と断言はできませんが、10年~15年を目安にして、出始めた不具合の種類によって本体交換か、部品交換・修理で対応するかを考えるのがよいでしょう。
壁付きシングルレバー混合栓の特徴
今回お風呂に元々設置されている蛇口は壁付きシングルレバー混合栓と呼ばれるタイプのものでした。1つのレバーハンドルを上下に動かすと水流の調整ができ、左右に動かすことで水とお湯の混合割合を調整し温度調節ができる仕組みの蛇口です。
上の画像が、今回交換することにした壁付きシングルレバー混合栓です。
シングルレバー混合栓のメリット
温度調節が容易にできることや、1アクションで止水できるために節水効果が見込めるなどのメリットがうたわれています。
左右にレバーを回すと水、お湯の混合割合を調整できて便利です。
シングルレバー混合栓のデメリット
一方でシングルレバー混合栓の特徴として見落とされがちなのは、1つのレバーで水とお湯の混合割合を調整する仕組みを実現するために内蔵されている「カートリッジ」の存在です。カートリッジ部分からの水漏れが始まると、カートリッジごと交換する他ありません。しかしこのカートリッジの部品代、交換費用がかさむことや、費用をかけてカートリッジを交換してもトラブルが続くことが多いこともあり、メーカーですら、現実的にはカートリッジの交換を積極的には勧めていません。
結果的に、カートリッジの不具合によって水漏れが起こった場合は、本体ごと交換するという選択をせざるを得ないのが現実です。そしてシングルレバー混合栓はカートリッジがある分、構造が複雑になるため、本体部品代もかさみます。全般的に費用がかさみがち、というのがシングルレバー混合栓のデメリットといえるでしょう。
壁付きツーハンドル混合栓の特徴
今回は、壁付ワンレバー混合栓と壁付きツーハンドル混合栓のメリット・デメリットを検討した上で、壁付きワンレバー混合栓から壁付きツーハンドル混合栓に交換することにしました。
今回新たに購入した蛇口本体は、TOTOのTMS20Cというタイプです。
ごくごく一般的な形状で、今どきのデザインという感じではありませんが、耐久性やメンテナンス性は抜群です。
壁付きツーハンドル混合栓のメリット
壁付ツーハンドル混合栓の特徴としては、まず何より構造がシンプルであることが挙げられます。シンプルであるがゆえに、本体部品代は壁付きワンレバー混合栓よりも安いです。そしてメンテナンス性にも優れているため、カートリッジ内蔵型のワンレバー混合栓よりも長期間使える可能性が高いことも見逃せません。
壁付きツーハンドル混合栓のデメリット
一方で壁付きツーハンドル混合栓のデメリットとしては、温度調整が面倒ということが挙げられます。水のハンドル、お湯のハンドルをそれぞれひねって最適な温度に調整するという使い方をする場合には面倒かもしれません。しかし現実的には、給湯器の温度設定を通常使う温度に固定して、お風呂に入るときにはお湯側だけひねって使用する、という方法を取ればこのデメリットはカバーできます。
お風呂の蛇口の交換方法
それでは実際の手順に入ります。
止水栓を閉める
お風呂の蛇口の交換作業の場合、基本的に屋外の元栓を閉める必要があります。戸建て、マンションいずれの場合も屋外に設置されていてあまり触れることがないかもしれませんが、必ずどこかにありますので探してバルブを閉めましょう。
止水栓の閉め方等については、下記の記事も参考にしてください。
蛇口本体を取り外す
モンキーレンチで蛇口と偏心管をとめているナットを緩めて外します。
設置後、相当期間経過している蛇口のナットは、固着していてなかなか回らないかもしれませんが、一度動き出せば、それ以降は軽く回せるようになります。
蛇口の上から見るとこのような状態です。
偏心管を取り外す
偏心管は反時計回り(左回り)に回すことで緩んで外せます。手で回せることもありますが、ここも固着している場合はモンキーレンチを使って回して外しましょう。
古いシールテープを取り除く
偏心管と壁の配管の接点には、水漏れを防ぐためにシールテープが巻かれています。今回は偏心管自体も新しいものに交換しますが、壁との間の水漏れの修理などで一旦外した偏心管をつけ直す場合、偏心管のねじ山部分に残っている古いシールテープをきれいにはがして巻きなおす必要があります。
今回は、壁の排水管側のねじ山にシールテープが残っていれば歯ブラシなどを使ってきれいに取り除きましょう。
偏心管を取り外すと上の画像のような状態になります。
取り外した蛇口本体と偏心管です。年代物のため、現行品よりずっしり重く一般の方では運ぶのも大変です。
新しい偏心管を壁の配管に仮合わせする
偏心管は取り付けるときに時計回りで壁の配管に回していきますが、途中でこれ以上回らないという状態まで回して取付け位置まで届かないからといって反時計回りに回すことはできません。シールテープが破れて水漏れの原因になるためです。よって、シールテープを巻きつける前に、何回転させたらちょうど良い位置に合わせられるかを確認しましょう。
シールテープを巻く
偏心管のねじ山部分にシールテープを巻きましょう。
シールテープは引っ張ってテンションをかけながら、6、7周時計回りに巻きます。反時計回りに巻きつけてしまうと、偏心管を壁の配管に取り付けるときにシールテープがちぎれて水漏れの原因となります。
偏心管を壁の配管に取り付ける
あらかじめ確認した回転数まで偏心管を回していきます。
ここで注意点としては、蛇口本体のねじの位置の少し手前で止めておくことです。左右ともに予定の位置の手前で止めた状態で、蛇口本体の取り付けに移ることがポイントです。
蛇口本体を取り付ける
壁付きツーハンドル混合栓を取り付けます。偏心管と蛇口本体の間に挟むパッキンを忘れないようにしましょう。
まず左の偏心管側のナットを回していきます。次に蛇口本体や偏心管を動かしながら、右の偏心管側に蛇口が合うように調整し、右の偏心管側のナットを回して蛇口を固定します。最後に蛇口本体が水平になるように、左右の偏心管を時計回りに徐々に動かして調整します。
蛇口本体を水平に調整できたら、蛇口本体と偏心管を接続部分のナットをモンキーレンチ等で締めます。蛇口本体を正面に見て、反時計回りに回すことでナットは締まります。
シャワーホースを取り付ける
蛇口本体にシャワーホースを取り付けます。今回は蛇口取り付け前にシャワーホースを取り付けてしまいました。蛇口本体を壁に取り付ける前でも後でも特に問題はありません。
シャワーホース専用のパッキンがホースの先に入っています。紛失に気をつけ、また取り付け忘れることのないように蛇口本体とシャワーホースの間に挟んで入れてください。
以上で交換作業は完了となります。
止水栓を開ける
最後に蛇口本体の止水栓を開け、作業前に閉めた建物全体の止水栓(元栓)を開けて動作確認しましょう。
蛇口本体の止水栓は、画像のようにマイナスドライバーで回して開けることができます。
まとめ
お風呂の蛇口の交換は、道具も少なく難易度も低い作業です。シングルレバー混合栓がツーハンドル混合栓よりも上のランクとして扱われる傾向がありますが、ツーハンドル混合栓のメンテナンス性や耐久性は見直されてもよいと感じます。
今回の作業の中で注意する部分としては、シールテープの巻き方と、偏心管を逆回転(反時計回り)させることなく蛇口を水平に持っていくことのみです。シールテープが破れると即水漏れに繋がりますので、この点だけは慎重に作業を行いましょう。